私たちのパンづくりは、“たった一人の誰かの笑顔”を思い浮かべることから始まります。 赤ワインとチーズが好きな“あの人”のため。仕事でお疲れ気味の“あの人”のため。 お孫さんが遊びに来るのを楽しみに待つ“あの人”のため。 ーー 私たちが目指すのは、そうして生まれるただ美味しいだけではない「物語を持ったパン」をつくること。 そして、食卓に会話のきっかけと笑顔をもたらすことです。それは、とてもささやかなことかもしれません。 しかし、食卓に並んだパンから会話が生まれ、笑顔がこぼれ、喜びが連鎖する。 その繰り返しはきっと、豊かで健やかな生活の源になるはずです。 そんな、「ごきげんな暮らし」のはじまる場所を目指し、 私たちは“たった一人の誰かの笑顔”を思い浮かべながら、今日もパンを焼いています。
コートルミエール
078-8804 北海道旭川市緑ヶ丘東4条2丁目1-6 TEL 0166-56-4992
Open 7:00〜15:00Closed Monday & Tuesday ※売り切れ次第営業を終了させていただきます
お客様の豊かな食卓と健やかな生活のためにできることを胸にパンを焼きはじめ、16年以上が経ちました。風雪の厳しい冬の美瑛で薪を割り、手造りの窯でパンを焼いていた日々。たくさんの方々に応援していただき、支えていただき、そしてご指導を受けながら、最初のパン屋「2ひきの猫」のオープンを迎えることができました。そのときに感じた深い感謝の気持ちは、今も決して忘れることはありません。
お店をはじめることができたとき、「ささやかなことかもしれないけれど、ひとりでも多くの方の役に立ちたい」と胸に誓いました。その思いは今も変わらず、私の考えの柱であり、行動の軸となっています。お客さま、お取引先業者さま、そしてともに働くスタッフと向き合うなかで、いつもこの思いを判断の基準としてきました。これから先、たくさんの出会いや出来事があると思いますが、この軸が揺らぐことはありません。
美味しいパンを焼くこと。パンと相性の良い感動できる食材をお客さまへご紹介すること。それが、私たちの重要なミッションです。
私は、パン屋になるにあたり、どこかで修行をしたことがありません。パン屋をはじめる前、私は薬剤師として医療の世界で働いていました。子供のころから薬草や漢方に興味があり、医療の道に進みましたが、薬剤師としてのキャリアを重ねながら漢方の勉強を続けていたところ、次第に「人の健康を維持する側でいたい」という思いに惹かれていきました。病にかかる前の、健康なときの生活の部分から関わることはできないだろうかと。
漢方には「未病治」という言葉があります。治療の大前提として、未だ病気になっていない状態「未病」を治す。つまり、体の不調を自ら感じとり、病気になる前に体調を整え、リセットする。——とても大切ですが、現代ではつい忘れられがちな考え方です。漢方の勉強を続け、深めていくほど、私の仕事への思いはこの「未病治」で膨らんでいきました。だからといって、一体私に何ができるというのだろうという怖さは、若さのおかげで私の思いを引き留めるほど強くは働きませんでした。医療から食の業界に飛び込んで行こうと決めたのは、28歳の春でした。
商品を作るうえで、ヨーロッパで触れてきた文化や経験、薬剤師である背景は私の宝のひとつです。
食の業界の中でもパンを選んだ理由は、当時の私がヨーロッパの文化にとても興味を持っていたという一点です。私はヨーロッパの文化が好きで、20代前半からしばしば旅行に行っていました。わずかな旅費でしたが、ヨーロッパの日差しを浴び、雨に打たれ、人と話し、生活を垣間見ることで視野を広げることができたと思っています。
レストランでの食事は高価になるため、街の商店で野菜を買い、パン屋でパンを買って食事を済ませていました。ヨーロッパでは、パン屋は街のインフラのようになっていて、食事に困ることはありませんでした。ドイツ、ギリシャ、ポーランド、ルーマニア、オーストリア、チェコ、スロヴァキア、ハンガリー、オランダ、フランス、ベルギー、エストニア、ブルガリア、フィンランド、ノルウェー、イタリアなどなど。いろいろな国に行きましたが、瞬きしている間に通り過ぎてしまうくらい小さな街にもパン屋はありました。
旅を重ねるうちに、私は美味しいパンの見分け方ができるようになっていました。いわゆるパンの目利きです。美味しいパンの作り方は知らないけれど、美味しいパンの味は知っている、という一風変わった自信がありました。
パンの業界に飛び込もうと覚悟を決めてから、美味しいパンを作れるようになるため、日々さまざまな製法を試し、使ったことのない材料と向き合いながら、「自分の味」を探しました。食べてくださるお客さまを思い浮かべ、食卓に並んだパンを思い浮かべ、周りに添えられているお料理を思い浮かべ、口にした時に感じていただけることを思い浮かべて。——それは、とても有意義でわくわくする毎日でした。商品を作るうえで、ヨーロッパで触れてきた文化や経験、薬剤師である背景は私の宝のひとつです。
食卓での役割と、手にとってくださるお客様を想像しながら生まれた当店のパンには、それぞれに物語が込められています。
もう一つ私たちの重要なミッションは、食卓に笑顔をもたらすこと。それは、とてもささやかなことかもしれないけれど、きっと誰かの、何かの役に立つことだと信じています。
食卓に並んだパンから会話が生まれ、笑顔がこぼれる。その笑顔からまた会話が弾み、喜びが生まれる。その繰り返しはきっと豊かで健やかな生活の源になるはずです。今の私たちは、食卓での会話のきっかけをお届けすることができます。それは、たったひとつの温かいパンかもしれません。あるいは、もっと違う「ささやかな」何かかもしれません。
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自分が美味しいと思えるパンや食材で、たくさんの人が笑顔になってくれること。手にとっていただいたパンから会話が生まれ、温かい気持ちになってもらえること。——そのすべてが、私たちにとって何にも変え難い喜びです。そのための素材選びから製法、お客さまの手元に届くまでのコミュニケーションを、一貫した哲学のもと、日々向き合いつづけることに私たちは糸目をつけません。
また、お店に関わりを持ってくださる方々への感謝も大切な思いです。近江商人の経営哲学「3方よし」を胸に、さらに「5方よし」とも「6方よし」とも広く解釈して、お客さまにとって、お取引業者さまにとって、哲学を共にしてくれるスタッフにとって、気持ちよくお店を受け入れてくださっている地域にとって、家族にとって、会社にとって、喜ばしい判断をすること。それが私たちの役割であり、生きがいであり、生涯にわたって大切にしていきたい思いです。
自分たちが心から美味しいと思える素材、毎日でも食べたいと思える素材で商品を作ること。素性のわかる安心・安全な素材を使えることは、作り手にとっても大きな喜びです。素材の魅力を存分に引き出して商品に仕上げること。これが私たちの目指している正直で真面目なものづくりの姿勢です。
豊かな暮らしの引き金となる“テーラープランニング”された対話と商品紹介で、お客さまの日常に「プチイベント」を起こし、食卓に前向きな会話が生まれるきっかけを提供することを目指しています。前向きな会話から「ごきげん」な心が生まれ、それに触れた誰かもまた「ごきげん」になる。私たちが大切にしているのは、そうした「ごきげんの連鎖」のきっかけをつくるコミュニケーションです。
「古き良き手仕事で作られる食との出会い」をテーマに、日本各地を定期的に旅しています。旅先では、毎回その土地の郷土色あふれる食材や、作り手の思いが込められた加工品などと出会い、時には生産者を訪ねて考え方や思いを伺ってきます。これまでに、旅を通じて多くの感動を味わいました。自分の足を運んでしか得られない貴重な情報や体験は、商品にも、お店づくりの中にも、深く染み込んでいます。そして、伝統的な作り方を何代も受け継いで作られつづけている素材や食材、その土地のお母さんたちが土地のものを使って作る加工品など、日本で昔から当たり前に作られてきた手仕事の食材は、現代の暮らしにも寄り添い、食卓を豊かにしてくれると信じています。お店では、旅を通じて出会った、そんな美味しいものをこれからもご紹介していきます。